2019314日(木)午後、共育ワークショップ2019「多様化社会において必要とされるコンピテンシーとは ~高大接続・社会接続の観点から~」を山口大学大学会館2階会議室(吉田キャンパス)にて開催し、学内外から68名(学内31名(教職員26名、大学生5名)、学外37名(教職員等33名、高校生4名))が参加した。共育ワークショップは、大学教育センターが主催し、大学の教育(共育)について、学生、教職員が一緒になり、様々な観点から語りあい、考えるというコンセプトで、2013年度から始まり、今年で6年目となる。今回は、昨年度の高等学校関係者(教員・生徒)を交えた取組から更に発展させ、大学関係者、高等学校関係者、企業・行政関係者が一緒になって、教育について考える場づくりを企画した。なお、本ワークショップは、山口大学・大学教育再生加速プログラム(YU-AP)事業成果交流会として開催した。

 はじめに、福田 隆眞 理事・副学長(教育学生担当)より開会挨拶があり、昨今の多様化社会において、大学関係者同士だけでなく、高等学校関係者や企業・行政関係者を交えながら、次代を担う人材の育成のあり方等について対話する今回のワークショップへの期待が述べられた。

 まず、株式会社ザメディアジョン・リージョナル代表取締役 北尾 洋二 氏より「『巻き込む力』を育むには ~企業家(起業家)からのメッセージ~」と題し、基調講演があった。冒頭、他人事を自分事にできることが大事であり、他人に責任を押し付けることなく、自分と他者との関係性を考えながら行動することの必要性を指摘した。さらに、社会の価値観が大きく変容し、流動化・先鋭化の時代の中で、自分自身の目的が明確であるとともに、従来の枠組を超えて戦略的に活動していく柔軟性が必要であると述べた。その中で、発信力・伝える力を身につけるとともに、いかに新しい価値を創造して期待感を醸成するかが、人を巻き込むために重要な事項であると述べた。そういう意味において、自己肯定感以上に、「自己有用感」を育むことが大切であると主張した。

 次に、熊本北高等学校教諭 溝上 広樹 氏より「『探究する力』を育むには ~高等学校現場からのメッセージ~」と題し、基調講演があった。高等学校教諭として、授業改善を行う意味や課題研究を通した生徒の深い学びに接してきた経験を紹介しながら、「探究心が高まるときはどんなときか」という問いをフロアに投げ掛けた。その後、高校生の生物科目での探究活動の事例を紹介しながら、「ミッション」「アイデンティティ」「信念」「コンピテンシー」「行動」「環境」のそれぞれのベクトルが一致すると、生徒の探究が進むことを「玉ねぎモデル」を基に解説 した。さらに、テーマ設定の工夫として、ファシリテ―ショングラフィックを用いたアイデアの見える化や論文の輪読などを紹介した。最後に、校内研修の設計や熊本県内でのアクティブラーニング型授業研究会の活動を紹介した。

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 前半の最後として、山口大学 大学教育機構 大学教育センター 林 透より「山口大学・大学教育再生加速プログラム(YU-AP)からのメッセージ」と題し、事業成果報告があった。YU-AP事業として2018年度に取り組んできた内容を紹介するとともに、事業終了後に向けた今後の課題に言及した。また、採択時から5年の月日が流れ、大学教育を取り巻く環境が大きく変化する中で、20142016年度にかけて、学内体制・環境整備や学生参画型意識醸成に重点を置きながら事業のスタートアップや他機関への波及効果を進めてきたが、2017年度以降は高大接続による相互交流やチームAPによる採択校同士の連携に重点がシフトしてきた状況を説明した。その中で、共育ワークショップの意味付けも、従来の教職学協働を主眼としたものからステークホルダー協働を重視するものに変容しつつあると説明した。

 後半のSDGsカードによるワークショップ「2030年多様化社会を見つめ、必要とされるコンピテンシーについて考えてみよう!」では、学校法人 広島城北学園 広島城北中・高等学校教頭 中川 耕治 氏、Communication Lab, Beyond words代表 希美江 氏のファシリテーションのもと、SDGsカードゲームを繰り広げ、国連が定めた持続可能社会のための17の目標の意味を理解し、2030年に向けて自分たちが何をしなければならないのか、どのようなコンピテンシーを身につける必要があるのかについて考えた。高校生・大学生から大人まで幅広い職種と世代の交流を通して、各グループに課せられた目標の達成を目指して、参加者一同、真剣かつ楽しくゲームを体験した。参加者アンケートでは、「高校生、大学生の皆さんと一緒のワークは新鮮でした。また参加させていただきたいです。」「カードゲームは大変示唆に富むものでした。」といった感想が多く、大変好評であった。

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 最後に、菊政 勲 大学教育機構 大学教育センター長より閉会挨拶があり、基調講演やグループワークの要点を振り返りながら、外部講師の方々への労いの言葉があった。

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