2020323日(月)午後、共育ワークショップ2020「直接評価×間接評価のチャレンジ ~どうすれば、学生の自己評価能力が高まるか~」の代替企画をYU-AP16回アドバイス会議として、山口大学 共通教育棟2階会議室(吉田キャンパス)にて開催した。当日は、登壇者、大学教育センター関係者、学生スタッフによる小規模開催とした。今回は、YU-AP事業最終年度に当たり、本事業目標の特徴の一つである「直接評価×間接評価活用による学修成果可視化」をテーマに、これまでの取組を振り返り、今後に向けた課題等について考えてみることとした。
 冒頭、福田 隆眞 山口大学 理事・副学長(教育学生担当)より開会挨拶があり、YU-AP事業協力への謝辞とともに、本企画が盛会となるよう期待する旨の言葉があった。

 同志社大学社会学部教授(YU-APアドバイザー) 山田 礼子 氏より「高等教育における直接評価×間接評価のチャレンジ ~日・米・英における大学生調査など~」と題し、基調講演があった。学習成果に関する直接評価と間接評価のモデルや国際動向について概説しながら、山田先生が長年関わってきた学生調査JCIRPから見られる分析結果や日米韓による大学生調査を通したクロス・ナショナル分析結果が紹介された。その後、直接評価と間接評価を統合した試行的取組を通して、直接評価による能力測定と間接評価との相関傾向が見られる事例の紹介があった。最後に、直接評価と間接評価から得られた学びの実態を一つの教育情報と捉え、実際に教育改善に結び付けていくための課題は何かとの問題提供があった。

 山口大学 大学研究推進機構 知的財産センター長・教授 木村 友久 氏より「知的財産教育科目における学習評価と学習成果 ~文部科学省教育関係共同利用拠点の成果~」と題し、取組紹介があった。2013年度から取り組んできた知的財産教育科目の1年次全学必修化や知財展開科目の開設、さらには、大学院共通教育科目の開設に取り組み、2020年度には33科目の設置が完了するとのことであった。特に、1年次全学必修科目「科学技術と社会」では、毎年度の授業理解度や学生授業評価・教員自己評価などの結果を検証しながら、授業構成の統一化、e-learning活用による意匠制度・商標制度の授業時間拡充などを授業改善を進め、受講生の知識理解度をアップしてきた取組が紹介された。その過程では、担当教員間によるFDを徹底しながら進めてきたことも紹介された。本学における授業科目レベルでの組織的な改善充実取組として、大いに参考にすべき事例である。これらの取組は、文部科学省・教育関係共同利用拠点の取組の一環として、他大学への波及・運用も進んでいるとのことであった。

 山口大学 大学教育機構 大学教育センター准教授 林  透 氏より「大学教育再生加速プログラム(YU-AP)における学習成果可視化 ~山口大学生コンピテンシー、YU CoB CuSを通して~」と題し、取組紹介があった。YU-AP事業6年間での学修成果可視化の取組を振り返った後、「大学全体」レベルの取組として、学修行動・学修到達度調査による「山口大学生コンピテンシー」の可視化の自立化や1年生・3年生の経年比較結果などを説明した。また、「学位プログラム」レベルの取組として、YU CoB CuSの全学展開や学部教員インタビューなどを紹介し、国際総合科学部での学修成果のほか、国際総合科学部以外の 学部の取組内容を説明した。さらには、これらの取組によって得られた学修成果に関するデータを活用し、高等学校や企業の関係者との対話の機会を設け、大学教育における学修成果そのものの相互確認などを行う取組を始めたことを紹介した。最後に、YU-AP事業を通して学修成果可視化の基盤づくりができたことを踏まえ、今後は、直接評価・間接評価の活用や学生の自己評価能力の向上に繋げていきたいということであった。

 新潟大学 経営戦略本部 教育戦略統括室 准教授 斎藤 有吾 氏より「どうすれば、学生の自己評価能力が高まるか ~直接評価×間接評価の活用に着目して~」と題し、話題提供があった。最初に、参加している学生スタッフに向けて、大学教育を通してどのような資質・能力を身に付けようとしているのか、ということを問いかけながら、学修成果の意義や価値について説明を行った。さらに、直接評価は根拠やエビデンスを伴った評価であるが、間接評価は根拠が伴わない評価であるとの解説があった後、新潟大学歯学部の「大学学習法」の授業実践を取り上げ、学生自身が書いたレポートを基にした自己評価(直接評価)と教員による評価に関し、ルーブリックにおけるレベル間の差異を丁寧に説明し、振り返りを行うことで、学生の自己評価と教員評価のズレが縮まり、学生自身の自己評価能力が高まるとの説明があった。個々の授業科目における学生の自己評価やリフレクションが大事であると述べた。今回の企画テーマに関し、大変示唆に富んだ内容であった。 

 山口大学共同獣医学部長・教授 佐藤 晃一 氏より「共同獣医学部の学位プログラムの質保証 ~全国初、欧州質保証機関認証の取組紹介~」と題し、取組紹介があった。まず、共同獣医学部の設置と獣医学教育改善に関する10年間計画の概要について説明があった後、欧州獣医学教育認定機構(The European Association of Establishments for Veterinary EducationEAEVE))による国際認証に向けた教育課程や教育施設の改善充実の取組について詳細に紹介があった。また、共同獣医学部で学ぶ学生の学修成果として卒業時に身に付けておくべき獣医学スキルであるDay One Competencyやログ・ブックの運用について説明があった。さらには、学生やステークホルダーが関与した形での質保証の体制図について説明があり、これらの取組を通して、獣医学教育が確実に充実してきている実感を抱いているとの言葉があった。本学における学位プログラムレベルの質保証の手本となる取組であり、大いに参考となる内容であった。

 最後に、菊政 勲 山口大学 大学教育機構 大学教育センター長より閉会挨拶があり、盛り沢山の内容で充実したものとなり、外部講師の方々への労いの言葉があった。

まとめ

 今回は、YU-AP事業成果報告を兼ねたアドバイス会議という形式での開催となった。学修成果の把握や可視化という今日的に非常に大事なテーマについて、YU-APアドバイザーである山田礼子先生による基調講演、YU-AP事業に加え、本学が誇る知財教育や共同獣医学部の取組紹介、さらには、本学の学修成果可視化の基礎づくりに貢献した斎藤有吾先生による話題提供があり、相互に意見交換できたことは大変有意義であった。今回の機会を通して得られた知見を事業終了後の継続的取組の中で有効に活かしていきたい。